ロタウイルス感染症とワクチン

ロタウイルス感染症とワクチンについて

本年より昨年よりロタウイルスワクチンが日本でも認可され、当院でも開始することとしました。今回ロタウイルスについて解説します。

 

[ノロウイルスよりも重症です]

最近ノロウイルスによる食中毒とか集団感染というニュースはよくきかれると思います。しかし、小児でロタウイルスの方が重い脱水をおこすこと、脳炎をおこすことがわかっており、入院もロタウイルス腸炎の方が多いのが現状です。経過も長く、下痢が1~2週間続きます。乳児白色下痢症といわれていましたが、白色にならないロタウイルスもありますし、白色になるロタウイルス以外のウイルスもあり、白色になる機序は不明です。

 

[かかったらどうしたらいいの?]

治療薬はありません。脱水の予防と安静、栄養が必要です。水分はOS-1を使い、経口補液を行います。嘔吐が落ち着き、下痢だけになってくれば消化のよい食事にします。詳しくは受診時に説明します。ひどい場合には点滴や入院になることもあります。

 

[季節は冬から春先、伝染力は強力]

ノロウイルスは年末~年始にかけて、ロタウイルスは冬から春先に多いとされます。迅速検査があり、30分ほどで結果をだすことができます。
伝染力は強力で、下痢便1g中に最大100億個のウイルスがあり、そのうちのたった10~100個が人に入れば感染します。さらに、手の表面では数日間、器物の表面では1~10日間もウイルスは感染力をもっています。手洗いをしっかりするだけでなく、器物は塩素系漂白剤や哺乳瓶用の消毒液で消毒しましょう。子どもだけでなく、大人にも感染します。

 

[ワクチンには2種類あります]

昨年より「ロタリックス」が、今年より「ロタテック」というワクチンも使えるようになりました。この二つの大きな違いは含まれている遺伝子型がロタリックスは1種類のみであることに対し、ロタテックは5種類含まれている点と、ロタリックスは2回接種でよいのですが、ロタテックは3回接種である点です。

 

  ロタリックス ロタテック
作り方 ヒト由来 ウシ由来
構成 1種類(G1) 5種類(G1,G2,G3、G4,P8)
回数 2回 3回

 

[遺伝子型って?]

ロタウイルスには様々な遺伝子の形があり、主にG1といわれるものが中心ですが、年や地域によって流行は異なり、その予測は困難といわれています。ロタリックスはこの中心となるG1を含んでおり、ロタテックはそれ以外の4種類も含み流行の90%以上をカバーするとされています。ただし、ロタリックスでも交差防御といって、G1以外の防御もできるとされています。

 

[当院ではロタテックを使用します]

理由として5種類含まれていることがあげられます。ロタリックスでも交差防御がありますが、G2という遺伝子型は交差ができにくいことがわかっており、そちらへの防御が心配です(十分との報告もあります)。
次に接種が3回であることです。ロタウイルスは何回も感染し、初回が最も重く、徐々に軽くなっていくことがわかっています。ワクチンの回数が多いほうがより軽症化が期待できます。

 

[接種時期と回数、金額は?]

1回目 生後6週から14週6日まで(生後2ヶ月を目安に、3ヶ月半まで)

2回目、3回目は4週(27日以上)あけて行います。

当院での金額は9500円(1回)3回で28500円です。
(ロタリックスと比較して合計金額として同じ位です)

注意:ロタリックスとロタテックを入れ替えることはできません。1回目に行ったもので2回目以降の接種を行います(医院によって採用が違います)。

 

[副反応は~腸重積の問題]

以前アメリカでロタウイルスワクチンが開始された時に腸重積の副反応がみられ使用中止になった経緯があります。今回のものは、大規模な治験により安全性を確認後、広く世界で導入されました。ただし、まだはじまったばかりのワクチンです。腸重積の症状(ぐったりとする、泣きと不機嫌を繰り返す、嘔吐を繰り返す、イチゴゼリー状の血便、原因不明の不機嫌な様子)がみられましたら、病院にご相談ください。それ以外のものとして下痢(5.5%)、嘔吐(4.2%)、発熱(1.3%)がありました。

 

編集後記

ロタウイルスは有名なノロウイルスと比べても症状が長く、重い病気です。自費で高額ですが、赤ちゃんにぜひワクチンのプレゼントをしてほしいと思います。生後2ヶ月はワクチンデビュー、肺炎球菌・ヒブそしてロタウイルスワクチンとセットでお勧めします。