耐性肺炎球菌

「薬剤耐性肺炎球菌感染症」について

最近風邪がなかなか治らない。繰り返し風邪を引く。という話をよくききます。また中耳炎を繰り返したりなかなか治らないという話もききます。これらは細菌検査をしてみると耐性肺炎球菌が関係している場合が多く、治療に難渋する耐性肺炎球菌感染症について今回は解説します。

 

耐性菌も人事ではない!!

[市中にあふれかえる耐性菌]

昨年当院で検出された肺炎球菌をまとめたところ、従来の普通に抗生剤がきく肺炎球菌は37%しかありませんでした。つまり60%以上は耐性菌であり、また薬剤によっては80%以上も耐性がでております。この最も耐性が強い(つまり効かない)抗生剤が日本では売り上げの上位に入っており、普通に風邪で抗生剤をもらっても治らない原因といえます。特に2歳以下で保育園に行っている人は耐性の割合が高いです。これは肺炎球菌がうつるには密接な接触が必要で、また少しくらいの風邪では登園してしまう人が多いため、病院にかかり薬をもらい、耐性でない菌のみ死滅し、耐性菌は残ったまま保育園に行き、そこで他人に移すことを繰り返しているため耐性度は高くなります。また2歳以下は免疫能が弱いため、なかなか除菌できない、鼻をかんだりできずいつまでも菌が鼻の中に残っていることも原因です。

 

風邪には抗生剤が必要??

[抗生剤の乱用が耐性を作り出す]

風邪の90%以上はウイルス感染症です。ウイルス感染症には抗生剤は無効です。今まで10%の細菌感染も否定できないという理由、または2次感染(ウイルス感染で弱ったところに細菌感染を合併する)を予防するという理由で抗生剤を処方することが多かったようです。そのため抗生剤が乱用され耐性菌が増加し、日本は世界でも最悪といえる耐性菌の割合となり、かえって風邪が治りにくい状況を作りだしてしまいました。当院では細菌感染の所見がなければ抗生剤を処方しません。開院当初は熱があるのに抗生剤を処方してもらえないとクレームがついたことがありましたが、ウイルス感染でも発熱があること、熱の高さだけが病気の重さではないことなど説明し、必要最小限に抗生剤の使用をしてきております。そして使用する場合は細菌検査を極力行ない、データも踏まえ有効である抗生剤を選択し、また投与量も考え短期間で治すことを原則としてやってきております。また耐性が強く、内服の抗生剤では効果不十分と考えられる場合は点滴による抗生剤治療(入院)も併用しながら早期に治すことを心がけています。

 

鼻たれ小僧は元気な子供??

[鼻は体のフィルターです]

外来をしていると何週間も鼻水がとまらないといって受診される方が多いことに驚きます。確かに水様性鼻水はウイルス感染やアレルギー、気温の変化に伴ってでることも多く、これらはそれほど心配ないのですが、黄色い色のついたネバネバした鼻水は細菌感染を伴っていることが多く、肺炎や中耳炎の原因となります。鼻は人間にとってフィルターのような役目をはたしており、ここで加湿され、細菌などがブロックされ、肺などを守っています。鼻づまりにて口で息をしている、黄色い鼻水はこのフィルターが目詰まりしていることをしめし、フィルター機能を早期に回復する必要があります。水様性鼻水も短期間ならよいのですが長く続くとウイルスが鼻の粘膜を壊し、細菌がつきやすい状況を作りだしますので、やはりこれも早く対処したほうがよいには変わりありません。よって鼻水は体を守るものであると同時に体が出している危険信号と考えたほうがよいと思います。

 

鼻水はどうしたらいいの??

[家庭でできる鼻洗浄のすすめ]

フィルターは目詰まりをしたら掃除が必要ですので、当院では鼻洗浄をすすめています。外来にても行ないますが、毎日することは難しいですし、1日に何回もできません。特に夜間に鼻がつまり不機嫌になることが多いと思います。こんなときは食塩重曹水による鼻洗浄を家庭でもできるよう指導しています。また鼻をかめる子供でもネバネバした鼻水はなかなか出にくいものです(大人の私も洗浄を併用します)。この鼻洗浄を行なうだけでも、症状は70%以上で消失し、細菌も60-80%いなくなったというデータがあります。ただ私の使用している印象ですと、風邪薬(抗生剤ではなく)と併用するとさらによい印象があります。ただし細菌感染を伴っている場合(黄色い鼻水、ひどい咳、高熱など)では抗生剤を併用する必要があります。鼻洗浄の仕方は外来にて指導しています。

 

諸悪の根源、鼻にあり

風邪の症状として発熱だけでなく、鼻水の色、量、変化なども気にして早めに治しましょう。鼻洗浄は暴れてできない、かわいそうでできないという話も聞きますが、子供のためを思ってすることです。ましてや抗生剤の効きにくい今こそできるだけ自然な治療を見直しましょう。

 

編集後記

耐性肺炎球菌のデータをまとめていたところ予想以上の耐性の強さに驚きました。鼻洗浄を普及し、風邪は早期にしっかり治しましょう。(太田)