おたふくかぜ

「おたふくかぜ」について

今年はおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が例年の2倍以上という流行をみせており、この鹿行地域でも大流行しています。そこで今回はおたふくかぜをテーマにしました。

 

おたふくかぜってどんな病気??

おたふくかぜ(ムンプス)ウイルスの感染症で耳下腺(耳のまわりにある唾をつくる臓器)の腫れを主症状としますが、全身の感染症でさまざまな合併症をおこすことがあります。潜伏期間は2~3週間で、耳下腺が腫れる前7日頃から後9日頃まで感染力を持ちます。特に腫れる1日前から腫れた3日後までが最もうつりやすい時期といわれます。感染は接触、空気から感染します。また感染しているが症状ははっきりしない人が30-40%いるといわれ、この人も感染源となるため大流行を引き起こします。両側の耳下腺が腫れる人が多いのですが、片側の人や片方腫れた次にもう一方が腫れてくる人もいます。そのほか顎下腺という顎の下の部分が腫れる人もいますし、顎の下のみの人もいます。腫れは3~7日くらいで消えますが、なかには10日位かかる人もいます。発熱はないこともあります。また学校伝染病ですので耳下腺の腫れがひくまでは出席停止となります。

 

おたふくかぜってこわいの??

発熱、頭痛、嘔吐などの症状があれば、無菌性髄膜炎という脳を覆っている髄膜という部分の炎症を起こします。耳下腺の腫れた後3~10日後に発症することが多いですので、おたふくかぜの診断がついた場合は自宅で安静が必要であり、頭痛、嘔吐がひどい場合には入院が必要となります。髄膜炎は10~50人に一人はなるといわれていますが、基本的には後遺症を残しませんが、まれに(6000人に1人)髄膜脳炎といい、脳まで炎症が及び後遺症を残す可能性があります。他に睾丸炎が有名ですが小児は稀で、思春期以降に20~35%に合併します。かなり痛いようですが、多くは片側のみで不妊の原因になることは稀です。

 

他には難聴が13000人に1人と少ないのですが、難治性です。通常は一側性におこります。膵炎が6%、妊婦では早期では流産の可能性がありますが、奇形などは明らかになっていません。

 

おたふくかぜは繰り返すの??

よくおたふくかぜは以前に診断されたがまた今回もなったといわれることがあります。基本的にはおたふくかぜはムンプスウイルス感染症であり、一回かかると免疫が出来るものです。ではどうしてこのようなことがおこるかというと、おたふくかぜの診断は意外に難しい場合があるのです。一つ目として耳下腺炎をおこすウイルスや細菌は他にもあるのです。そしてもう一つの理由は反復性耳下腺炎という病気があります。これはまだはっきり原因はわかっていないのですが、数週間から数年おきに耳下腺の腫脹を繰り返します。はじめて腫れたものがこの反復性耳下腺炎のこともあり、実際はおたふくかぜにかかったことのない人もいます。診断は血液検査にておたふくかぜかどうかをみます。この反復性耳下腺炎は13~15歳までの間に80~90%が自然治癒します。したがって反復する耳下腺炎がある人は血液検査をお勧めします。

 

予防接種はしたほうがいいの??

日本では昔MMRワクチンのひとつとして定期接種に組み込まれていましたが、ワクチン後の髄膜炎の発生が問題となり、現在は任意接種になっています。しかし、世界的にみるとMMRをつづけており、ワクチンによる髄膜炎の合併は0.01%といわれ、自然感染の10%よりははるかに少ないのが事実です。またワクチンをしてもかかる人がいますが、抗体獲得率は90~95%といわれており、かかったとしても軽く済みます。また難聴はワクチンの副作用として報告はありません。この他に接種後2~3週後に一過性の耳下腺腫脹や発熱がみられることがあります。

 

接種の時期は、罹患のピークは4~5歳であり、保育園、幼稚園、小学校などで感染する機会が多いので集団生活に入る前で、1~2歳のうちに接種しておいたほうがよいかと思います。またおたふくかぜは前述のように30%が知らないうちにかかっていることもあるのですが、かかったことがあり、免疫がある人に予防接種をしても問題はありません。

 

編集後記

おたふくかぜは4年に1回の流行といわれており、今年は流行年のようです。水ぼうそうも年末から流行しましたし、3月に入ってからインフルエンザの流行、そして今年も花粉が多いとつらい春となりました。しかし、今は医学が進歩し、予防方法がいろいろ出来るようになりました。「備えあれば憂い無し」は今の健康管理に大事ですね。